スランプの原因

2023年10月3日 2023年10月2日 Tomono

順調に成長していたと思ったら、急に速度を失い、何とか上がろうとして色々と試してみるのだけれども、それがまた裏目に出て、負のスパイラルが続く…。

運動やアートだけではなく、仕事でもそうなる方は少なくありません。

私は第三者目線からこの事について、思い当たる事があります。

それは、弓道をしていた頃の話です。

私が所属していた弓道部には、その当時、沢山上手な先輩たちがいて、私は彼らに追いつこうと必死に毎日練習していました。

すると、注目していたとあるお一人の先輩が、昨日まで調子が良く、ほとんど矢を外す事も無かったのに、急に一つも当たらなくなってしまいました。

「この先輩にもスランプがあるのか…」

そう思い、横目に観察していたのですが、氣が焦り、上手くいかない事に焦り、躍起になって遅くまで練習しても、悪くなることはあっても持ち直す兆しもありませんでした。

当時の師匠である山田先生は、ジッとその様子を見ておられ、そして、一番注意深く見守っていらっしゃるようでした。

多少、手やひじは直してあげるものの、しばらく特に何も言わなかったんですね。

厳しい目をしていましたが。

その様子を不思議がっていたある日。

とうとう師匠は言いました。

「○○くん。型を一度、前に戻してもいいんじゃないかな？」

弓道の型は決まっていますが、多少個人差というものがあります。

体格や筋力によって微妙に異なる部分があり、先輩はどうやらそれを工夫していたようなんですね。

何しろ先輩は身長が190センチもあり、弓道の弓も「伸び寸」と言って、普通の弓よりも特別に大きく作られたものを使用していたので、きっと彼なりに毎日試行錯誤していたのでしょう。

私は先輩が型を変えたことに氣がつきませんでした。

先輩が助言を貰って師匠曰く「一つ前の型」とやらに戻した時に、「あ、これは見慣れた型だ」と直ぐに分かりました。

ちょっと荒々しいけれど、融通が利きそうな型。

そして、戻した瞬間に先輩の矢は、高らかに的を射抜く音を射場にさせたのでした。

師匠はとても嬉しそうに、彼の肩を叩き「いいじゃない」と言いました。

先輩のその型は、昇段試験だと少し怪しい型でしたが、また的に当たるようになりました。

彼は毎日一生懸命頑張っていて、成長もしており、その勢いは破竹の勢いでした。

しかし、何故彼がスランプになったのか。

守破離の守が出来切ってないまま、破に行ったからです。

彼は確かに成長していました。

強い成長欲もあり、毎日矢が当たってしまうため、周りからも褒められ、次の大会でも成果が出るのでは？とも言われるほど急成長していました。

そんな中、もっと型を綺麗に、のびやかにしようと思ったのかもしれません。

弓道には大会と昇段試験の二つのいわゆるイベントがあり、当たると良いのは大会。

型がキレイで良いのは昇段試験なのですね。

当たる上に、段も上の人間を同時に目指してしまったのでしょう。

守が崩れてしまったのです。

もしかしたら、師匠の綺麗な型になりたかったのかもしれませんね。

しかし、彼と師匠では、筋力も身長も、弓の素材も、何もかもが違います。

師匠はその氣持ちを汲んで、数日黙っていたのかもしれません。

スランプになった時に、一体何が原因でそうなるのか？と言いますと、一番大切な部分が抜け落ちるからなのです。

土台である「守」が崩れて起こるのです。

原点に返る事です。

力を抜いて、変な拘りを一度手放し、後退していると思ったとしても、一度原点に返ると、大切なのに見えなくなっていたものが、どんどん見えてきます。

何故成長が停滞したのかも見えてきます。

もし、あなたがスランプになりましたら是非「原点に返る」をやってみてください。