#31【巍峡国史伝】天の章 伏せる月、ふるえる睡蓮
天の章、第三十一話更新しました。
お楽しみください。
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#31【巍峡国史伝】天の章 伏せる月、ふるえる睡蓮
何の予兆もなく、蒲公英(ほくよう)は目が覚めた。
酷く、首と頭が痛い。まだ、夜中であった。
暗く、冷たい石の牢の中に蒲公英はいた。
上のほうの小さな隙間から、空が見えた。
星がとても綺麗で、そこから月明かりらしき明るい光も見える。
「そうか······、今日は満月か」
知らず知らず、呟く蒲公英。
何やら、起きた時から変な喪失感がしてたまらない。
何か、忘れ物でもあっただろうか考えても、思いつくようなものはなかった。
夢は、相変わらず見ていた。とても綺麗な水辺のお屋敷の夢。
最近、白い衣を着ているのが、少年であるとわかってきた。彼はとても大きな三角の耳飾をしている。とても長細くて、彼が振り向くと金色にピカッと光る。大抵、夢はそこで終わってしまう。
いや、大きな進歩だった。 蒲公英は木でできた、硬く寝心地の悪い寝台から体を起こし、足をぶらつかせた。
とうとう、犯罪者になってしまった。
実感は湧かない。
「お前は笑わないが、泣きもしないのだな」
急に、部屋の角の影が動き、当たり前のように蒲公英に歩を進めて来た者がいた。
「今はどちらもしませんが、驚きはしますよ。黒冬(こくとう)殿。どこから…」
「冬の従者は影も味方に出来る。隣からここへ来るなど容易い」
片側の身丈ほどある背の布を払い、牢の外を見る黒冬。
見た目はとても若いが、こうもどっしりと構えている様子を見ると、やはり不思議な生き物だと心底思ってしまう。
「私もお前も、世間では立派な犯罪者になったのだろうな。安寧の思惑通りに事が進んでいるのだろう」
黒冬は鉄格子に背を預け、徐に腕を組んで上を向いた。
そして、彼の癖である、目を細める表情をした。
「なるほど、満月か。 安寧の気が満つるときがすなわち、犬御神の力が引く時でもある。だが、地上では違う筈だ」
蒲公英が首を傾げる。
「お前に誰も何も話さなかったようだな。当然といえば当然だ。しかし、私とて詳しくは知らない。ここと下が合わせのようになっていると聞く。対極の力の釣り合いによってこの世界は保たれているのだ。本来、女神と龍 がこちらで、麒麟と犬御神が下にあることで陰陽の創造が成り立っていた…と言う話しだ。御伽草子を信じるならばな」
「…」
黒冬は黙って少し考えたが、瞬きをすると蒲公英を見ずに呟くように言った。
「あるからあり、ないからない。自然の摂理という奴だ。 神にしか見えない深い因果があるのだろう」
蒲公英は納得出来ないように生返事をした。分からないが、そう解釈するしかない。
黒冬が下を向き何かに警戒した。
足で何かを蹴飛ばそうとしているのか。
蒲公英側からは、黄色い毛しか見えない。
「何の用だ。 妖であろう。ここには罪人しか居らぬ」
「あたいを入れた方がいいと思うよ、童」
高いような、低いような声は、怪しい響きを持っていた。
蒲公英も警戒する中、黒冬は余り変わらぬ態度だ。
「ずっと付いてきていたのは知っている。何が目的なのだ」
「あたいはただの妖ではないよ。むしろ、味方と言っていい」
黒冬は目を細め、片眉を上げた。沈黙が牢の中に訪れる。
「欲しい情報はやるよ。 今後犬御神の力にもなろうとも。勿論条件はあるさね。大犬神社に来て欲しいのさ。分かるね?」
黒冬が足をどけると、そこには狐がいた。
大きな口、全てを見ているかのような銀色の瞳。
茶色い手先を、狐はぺろりと舐めた。
「蒲公英を、天界から下界へ向かわせるのか?」
「そうさね。それ以外何がある。安心おし。 あたいも行くよ」
「お前も?」
防がれていた足がどかされ、狐はするりと牢の中に入ってきた。牢の中には、明るすぎるほどの黄色。 黒冬はその発言に初めて戸惑いを見せた。
姿勢を崩すと狐はにやりと笑う。
不気味ではあるが、こういう反応が好きなようにも見える。
「下界なんて、あたいの庭みたいなもんさ」
蒲公英は黒冬を見上げた。彼は神妙な顔で狐を見ている。
「信用出来ない…。そうだろうねぇ。何せあんたたちは四面楚歌の犯罪者。八朔で事件を起こされ、維摩の王を殺した濡れ衣を着せられ、白馬の地に連れてかれたとなると、友好関係にヒビが入ったも同然だよ。そんな奴らに肩入れするなんて、よっぽどの物好きだろうよ。まあ、というのにあんたは随分、素っ気無い顔してるようだけどね」
黒冬は鼻で笑い、なお、狐を食い入るように見ていた。
「犬御神、あんたがお決めよ。まあ、どちらを選んでも、あたいはあんたに付いていくけどねぇ」
ヒャッヒャッヒャッと、咳き込むように狐は笑う。
「四面楚歌…確かに、私の居場所は白天社以外にもう、どこにもないのかもしれない」
狐は相変わらずニヤニヤとしている。
「しかし、何故私が地上へ?」
「おやおや。お嬢さん下界はあんたの古巣。良い所だよ。ここより何もかもあると言ってもいい! 地上は地獄の地盤などと呼ばれているが、実際ここより汚れてて、様々なものがあって、とても楽しいところさ。あたしはここより、地上が好きだね。龍と女神は上、麒麟と犬御神は下。それが崩れれば歯車が外れたようにがらがら世界は壊れていく」
狐はてってっと歩き、ぐるぐると部屋を回りだし た。
「下界は感情の大陸と、我が主は呼んでいるんだよ。犬御神が創った世だ。そりゃあそうだろうね。感情の神様。 破壊と創造。文句なしにあんたは偉大だよ。故に残酷でもあるけどねぇ」
言いつつ、狐は楽しそうだ。
「どういうことだ、狐」
「どうもこうも。 下界は犬御神が創ったのさ。千蘇我(ちそが)で犬御神が創造したのは、謡谷(うただに)くらいだけどね。木の棒一突き、下界の完成。ああ、あんたも龍の力で封印されてて、己の力が思う存分発揮出来ないんだったね。五天布の黒冬。大丈夫。近いうち、あたしの知り合いがその封印をといてくれるさ。気が向きゃあね」
わんわんと、牢に狐の声が反響する。
まだ、狐は何かを知っているのに言っていないように見える。
「何故そこまで知る? お前の主とは誰だ」
ぴょこんと、狐は寝台の上の蒲公英の隣に飛び乗った。
「あんたはつくづく、抜け目のない男だね、黒冬。 昔からそうだったけど。…鳥って言えば、分かるかい?」
黒冬は目を見開いたが、すぐに視線を背後にやり、静かに影に消えた。
背にある黒い布まで全て影に吸い込まれると、外から足音がした。
「寝たふりをしな。 ただ、警戒を怠るんじゃないよ? 犬御神」
今にも笑い出しそうな狐の声。 蒲公英は狐が枕に姿を変えるのを見て、ギョッとしつつも、言われたとおりにそっ身を横たえた。
靴底の牢の石を叩く音が、徐々に近づいてくる。
何か話していたのか、看守か誰かの「まったくでございます」という男の声が、やけに場違いに響いた。
「こちらにございます。 余り面会時間は取っておりませんので、悪しからず」
明らかに、自分の牢の前で足音は止まる。
寝台で薄目を開くと、枕元から小さな声がした。
「おやおや。犬御神。これはとんでもない珍客だよ?あんた、武器持ってないのかい? しかたないね。逃げる準備ぐらいしといで」
狐の言葉を聞き、蒲公英は眉を秘めた。
もう、誰が敵なのか分からない状態である。
黙しながらもいつでも動けるように構えた。
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…#32へ続く▶▶▶
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